今週の遺言 » 第82回ゴア元副大統領の別居に他の女性の影はない。欧米の新離婚事情とは?
2010年7月03日号
日本でも勿論報道されたと思うが、元米国副大統領アル・ゴア夫妻が、結婚40年周年記念の2週間後に別居したことは、北米中のトップニュースになっている。われわれ夫婦も昨年40周年を迎えたところなので、他人事とは思えず、新聞、雑誌、インターネットを駆使してニュースを集めた。その結果解ったことは、これからの新らしい「離婚形態」とでもいうものであった。
まずデータがある。イギリスの話だが、離婚率は明らかに下っている(カナダも同様)。にもかかわらず、60歳以上の離婚は激増しているのだ。'97年には約9000件だったものが、10年後の'07年には1万3678件と、何と5割以上も増えている。当然不倫などによる異性問題が原因というのも多いのだが、全く色恋沙汰がからまないケースが増えているという。そしてその典型がゴア夫妻だという人が多い。
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ゴア夫妻は、米政界きってのオシドリ夫婦といわれ、今回も2000年の大統領候補指名時の「ディープ・キス」写真が、世界中に流れたので、見た読者も多いと思う。二人は高校時代にダンス・パーティーで知り合い、4年の交際後、'70年に22歳と21歳で結婚した。4人の子供にも恵まれたが、全く平坦な40年ではなかった。アルのベトナム戦争への配属をはじめ、4人目にやっと男の子に恵まれた長男アル3世の交通事故(瀕死の重傷で、このためゴアは'92年の大統領選出馬を諦めている)、妻のティッパー(本名はメアリーだがこの名で通っている)のウツ病、甲状腺手術、更に2000年の歴史に残る微差の敗北(全国の投票では上廻ったが、フロリダ州でブッシュの選挙人が多くなって敗れた)などなど苦難も多かった。そ れらを夫婦で切り抜け、大統領にはなれなかったが、環境活動家としては大成功をおさめた。
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'06年に書いた「不都合な真実」は世界的ベストセラーとなり、映画も大ヒットし、'07年のアカデミー長篇ドキュメンタリー部門のオスカーを取った。更にこれらの活動が認められ、ノーベル平和賞まで授与されたのである。三人の孫にも恵まれ、テネシー州ナッシュビルの超豪邸(余りに大きいので地球温暖化を助長していると皮肉を言われる)に住み、サンフランシスコにも豪華マンションをもち、何不自由ない老後が待っている筈である。ところが、それがどうやら別居の原因らしいのだから、世の中解らない。
二人に近いあらゆる人々の証言から、ゴアの女性関係は全く無いという。では何が二人を別れさせたか? どうやらそれは夫の超成功らしいのだ。ノーベル賞は名誉が主だが、ゴアの「環境ビジネス」は止るところを知らず、今や世界初の環境億万長者といわれている。もともと裕福な家に生れ、著書や映画も当った上に、ビジネスも大当りで、アルは前にも増して世界中を飛び廻っている。一方ティッパーは、ようやく落着いたのだから、子供達や孫達と平穏に暮らしたいらしいのだ。親友の一人の言葉がすべてを表わしている。「二人の生きたい道が別れてしまったんです」。
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一般論に戻る。イギリスのある弁護士の意見は一理ある。人間は健康で長生きしすぎだというのだ。一組の男女が、40年も50年も一緒に暮らせる、という事の方が現実的ではないという。しかしボクら夫婦を含めて、実際に40年以上仲良く暮らしている夫婦も沢山居るのだから、説得力は弱い。
むしろ同じイギリスで「50代以上対象のデートクラブ」の経営者の意見の方が納得できそうだ。「これはベイビー・ブーマー(日本の団塊の世代に当る)が60代に入ったからさ。彼らはフリーセックスを発明し、マリファナを吸い、髪に花を飾ってた連中だぜ」。うん、ウッドストックを思い出した。ブーマー世代に「とも白髪」は似合わないかも知れない。ビートたけしを筆頭とする、日本のこの世代の人の声を聞いてみたいものだ。
データに戻ろう。60歳以上の離婚の場合、大多数の男性は別の女性と一緒になるという。一方妻の場合、7割は"独立"を求める。ほとんどの女性は、再び仕事につく。まずすでに経済的に独立している女性が多いし、最近の判例では夫の財産や年金の分与も、女性に有利な傾向だそうだ。
一方離婚せず、何とか修復して結婚生活を続けようとする女性たちは、何を心配しているのか。それは子供達の将来がトップである。この世代になると、子供は皆成人している(ゴア夫妻の子達は上が36、下が27歳だという)。一見もう大丈夫という気がしないでもないが、実は大人になっても、両親の離婚によって、一種の「みなしご」感を得る人は多いという。彼らにとって両親と過した過去は、自分達の将来であり、その「過去」が間違いだったとなると、自分の将来に自信がもてなくなる。
最も現実的なことのひとつに、自分達の結婚式に、離婚した両親はどのような形で現われるのだろうか、ということがある。父が再婚し、母が独身の場合が一番問題らしい。両方とも再婚していれば4人で出る場合もあるが、3人の場合は、元の夫婦が両親としての席に座るべき、という意見が多数を占めている。そして出来るだけ友好的雰囲気を漂わせるのが親の務めだそうだ。
ゴア夫妻のこれからを占うことは難かしいが、離婚はとも角、向う10年くらいの修復はもっと難事だろう。二人は真面目すぎるし、自分に正直に生きたいのだろう。一方にはクリントン元大統領夫妻のように、あれだけの女性スキャンダルを起しながら、堂々と「仮面夫婦」を演じているカップルも居る。その評価は、棺を蓋うまで解るまい。
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